Special

Project Story
LEXUS LS搭載製品

スペシャルコンテンツ

Project Member

中川 佳久
シート事業本部
シート製品企画部

初代レクサスが世の中に与えたインパクトを、はるかに上回る「至高の美」が求められる中、開発全体の統括を担当し、トヨタ自動車側との交渉や社内の調整を行った。

渡辺 徹
シート事業本部
第3シート設計部

フロントシート開発のリーダーを務める。「やわらかさ」などの感覚的な要求にも、データと理論をもってシートメーカーとしての最適解を粘り強く提案し続けた。

阿部 圭輔
シート事業本部
第3シート設計部

入社1年目からレクサスを担当。むち打ち傷害軽減を図るアクティブヘッドレストを手掛け、要求性能を満たす製品開発のため、社内やトヨタ自動車から知見を集めた。

嵐 真人
シート事業本部
Frシート骨格開発部

多くの機能が搭載されるレクサスシートの骨格を、標準骨格をベースとして開発することに成功。

百合草 弘行
シート事業本部
シート生技部

部品点数の多いシートを組み立てるための専用工程が必要となったが、通常の生産ラインを有効活用することで、最小限のコストで実現した。

北條 奨
内外装事業本部
ドアトリム設計部

ドアトリム設計担当。デザイナーの考える「至高の美」を忠実に工業製品として具現化するため、これまでにない素材や構造を考案・提案した。

山野邊 友太
内外装事業本部
内外装生技部

ドアトリムの生産技術担当。二酸化炭素吸引量に優れた一年草植物のケナフを用いた材料で、従来比で約3割の軽量化を実現。天然素材特有の品質のばらつきを、設備側でコントロールする工法を必要とした。

高級車の概念を、再びくつがえせ。
「美」と「乗り心地」を極めた新型LS。

2017年10月、11年ぶりとなるレクサス LSのフルモデルチェンジが公式に発表された。その内装開発の現場には、トヨタ自動車のCE(チーフエンジニア)が何度も来社し、「初代LSのインパクトを超えるものを!」と想いを伝えたという。静粛性と内外装の組み上げ精度において、「高級車の概念を変えた」と讃えられ、欧州の高級車にも影響を与えた初代LS。それを超えるものとは何か?キーワードは、CEが何度も口にした「至高の美」「もてなしを体現する質感と乗り心地」。技術者たちは、未知の領域を目指した開発に挑むこととなった。

「次のフルモデルチェンジは、いつになるのか」。システムサプライヤーとして、内装を任されているトヨタ紡織の内部でも、その時期をはかりかねていた。ただ、次期モデル搭載にふさわしい技術とアイテムの開発は継続し、トヨタ自動車に対して提案を続けていた。
「どうやらはじまるようだ」。プロジェクト立ち上げの連絡と同時に、CEはこう言った。「乗り心地に徹底的にこだわる。長時間の試乗も含めしっかりやっていく」。メンバーたちは、その言葉から、質を高めることに対する想い入れの強さを知った。

初代LSの残したインパクトを超える。その熱い想いがひしひしと伝わってきました

トヨタ自動車が求める「至高の美」を象徴する部品がある。切子ガラスとプリーツ表皮だ。ドアの内張りに日本独特の美を取り入れたいという要望から出た案だが、ガラスは安全性に懸念があり、プリーツ表皮は、職人が手折りするため品質を安定させることが難しい。通常の設計であれば、それらに似せた素材や形状を提案するところだが、ムリを押してでも本物にこだわりたいという。
同様に、デザイナーのイメージを忠実に具現化する方針も徹底された。理想の形状にこだわれば、構造や耐久性・生産効率などにムリが生じコストがかかる。そのコストを最小限に抑えつつ、製品として成立させなければならないため、あらゆる部分において、新しいモノづくり方法の検討が必要だった。そうした要望を、技術者としていかに実現させるか。それがサプライヤーの使命であり、腕の見せ所である。

  • ■切子ガラス
    飛散防止フィルムの使用や、外れても乗員に当たらない構造を開発。

  • ■プリーツ表皮
    匠の技である意匠を崩さないよう、センサーによる基材への圧着力管理の対策を施した。
    この貼り合わせ技術により、トヨタ自動車のCE特別賞を受賞(株式会社三協と共同受賞)。

シート開発においても要求はシビアだった。乗り心地を徹底的に追求するため、何度も試乗が行われ、その度に改善点が出た。LSのシートは多様な機能が搭載された部品の集合体であるため、1カ所を変えれば他の部位にも影響が出る。部品・部位ごとの設計者同士、あるいは生産技術・製造との間で「変えてほしい」、「変えられては困る」というやりとりが頻発した。そんな中でも、メンバーたちは、お客様の期待を上回り、上質なLSにしていくための提案も行っていた。そのひとつが、新幹線向けに納入実績のある「背ズレしにくいシート」の考え方だ。リクライニングの際に体勢が変わることで座りなおさなければならない場面があるが、専用の機構を設けることで背ズレを防ぐ。この提案には一定のスペースが必要となるため、車両側でボデーの形状を検討してもらわねばならない。部品を供給するだけでなく、トヨタ自動車と一緒にクルマづくりにかかわっていくシステムサプライヤーのトヨタ紡織だからこそ実現できたシートだ。

多様な機能が詰め込まれたシート内部。

そして迎えたラインオフ(量産開始)の日。技術者たちに安堵の表情はなかった。お客様の声を聞くまでは、ここまでの取り組みが正解だったのか否かを判断することはできない。日本に先立ち、米国のモーターショーで発表された新型LS。トヨタ自動車の担当者社員からは、「シートは大好評でした」との短いメールが届いた。そして東京モーターショー。トヨタ紡織ブースでも、レクサス搭載製品を展示した。当社ブースで案内役を務めたシート設計の渡辺は、先代LSのオーナーだと名乗る来場者を接客していた。その方は、レクサスLSのシートをひととおり見て、触り、座って、シートから立ち上がるとこう言った。「すごい! 買い換えようかな」と。

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