実験部において乗り心地評価を行う専門パネラーとして、スポーツシート開発に参加。
スポーツシートの製品化に向け、トヨタ自動車との折衝から・日程調整・進捗管理・テストなど、全体の統括を担当。
入社後、一貫してシート設計を担当。2017年11月に新設されたスポーツシート開発室の室長に就任。
デザイン部所属時代にスポーツシート開発に参加。デザイナーの視点からこれまでにないシートを目指した。
トヨタ自動車が展開するコンプリートカーブランド「GRMN」。量産車ベースでありながら、走る楽しさを極限まで追求したクルマとして、スポーツカーを愛するファンたちの注目を集めた。そのラインナップの中、2012年に発売された限定100台のiQに搭載されたシートが、トヨタ紡織が開発したTBスポーツシートだ。搭乗者の体格を選ばず、誰にでも確実にフィットし、かつ、高いホールド性を持つことから、その後もGRMNの他の車種にも採用され続けている。だが、TBスポーツシートは開発当初、市販車種への搭載を目指したものではなかったという。技術者たちは、何を求め、何を残そうとしたのか。
2004年、世界有数の自動車用内装部品のメガサプライヤーとなるべく、3社による合併で誕生した新生・トヨタ紡織。それまでにスポーツシートを開発していた歴史はあったが、事業の本流である量産品の供給に集中するため、傍流であったスポーツシート開発は凍結された。だが、走行性能を追求したクルマで性能を発揮できるシート開発をしなければ、技術も磨かれないと主張する技術者たちもいた。「シートメーカーとして、スポーツシートを持っていないことは、問題ではないのか!」。
一方、長年の実験で得たノウハウから「乗り心地理論」を確立した実験部は、自分たちの主張が製品に取り入れられないことにジレンマを抱えていた。デザイン部の主張する、シートを含めた車室空間の美しさや斬新さと背反するのだ。ただ、目指す方向は同じだ。疲れず快適で、ドライバーの動作にリニアに反応し、かつ美しい。そんな機能美を追求したシート。「我々の持つ『乗り心地理論』とノウハウを結集したら、どんなシートができるだろう」。「やるならスポーツシートだろう」。こうしてスポーツシート開発の再興を目指す有志が集まった。
機能に裏付けられた意匠である機能美を追求しました
プロトタイプは、削り出した発泡スチロールにウレタンを貼ったものだった。サーキットを走り、ウレタンを削り、貼り付け、また走る。取れるだけのデータを取り、会社に戻って解析をする。ところが、一般的なテスト車両では、出力が足りず、ボデー剛性も十分ではないため、適切な評価ができない。メンバーたちは、スポーツタイプのテスト車両の購入を役員会に諮った。役員の応援が得られたおかげで承認され、開発意欲が高まった。
性能を追求するためにも、高性能なスポーツタイプのテストカーは不可欠でした
新たな工法も模索した。一般的なシートは、骨格となるフレームをウレタンで覆い、布や革などで構成されたカバーの組付け時にテンションをかけて形状を出す。ところがテンションをかけているため、体重の軽い人では理想的な形状に凹まない場合がある。そこで目を付けたのが表皮一体発泡工法だ。これは、金型の中にあらかじめカバーをセットしウレタンの原料を流し込むため、狙った形状をダイレクトに出すことができ、体重や体格差にかかわらず、理想的な凹面形状を保持することができ、高ホールド性とフィット感を実現できた。サーキットでのテスト走行に同乗した杉山は、その感想をこう語る。「サーキット走行では、4点式のシートベルトで体を縛り上げるように固定するのですが、3点式のシートベルトでも安心して乗っていられるシートに仕上がった」。
量産品にフィードバックするためにも、『誰にでもフィットする』ことは必須でした
自分たちの目指した究極のシート。その発表の場は展示会だった。それがトヨタ自動車の目に留まり、GRMNへの搭載へとつながっていく。まずは、限定100台のiQに。その後、マークXへの搭載などを含めても、累計500台。パネラーとして官能試験を担当した高野は言う。「一度乗ってもらえれば、『これが欲しい!』と言ってもらえるシートだと思う。でも、体験できる機会が少ないことが悩ましい」と。だが、イベントなどでその乗り心地を知ったファンからは、シート単体での市販化を望む声が絶えない。また、TBスポーツシートの知見は、その後の「LEXUS F / F SPORT」専用スポーツシートとして採用された。
TBスポーツシートを発展させるための部署を設立しました。ファンの期待に応えていきたい
「クルマの会社の社員であるならば、クルマの楽しさと自社製品の良さを心の底から感じてほしい」という趣旨で始まった部活動。TOYOTA GAZOO Racingが主催するラリーチャレンジにも参戦。レースには、ドライバーだけでなくメカニックやサポートスタッフも必要なため、活動を通じて人間関係や協力性を育むことを目的としている。また、多治見技術センターのテストコースでは、毎月末の金曜を「ドライビングフライデー」とし、昼からコースを解放している。テストコースの走行には専用の資格が必要だが、有資格者が同乗することで、社員なら誰でも走行することができる。
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